Home > IPv6実践導入ガイド > 01 IPv6とはどんな規格か
IPv6を学ぶ前に、IPとはそもそも何であるかを先に復習しておこう。TCP/IPが1つのプロトコルと思われている方がもし読者の中にいらっしゃるのであれば、この節がきっと役に立つはずだ。
まず「プロトコル」であるが、一言で言ってしまえば「人」と「人」が、コンピューターとネットワークを使用して、何かしらの情報交換をするために必要なコンピュータの「決め事」である。
人が理解できる形式の「情報」を電気または光の信号まで変換し、その信号を人が理解出来る形式の「情報」に復元するのが「プロトコル」である。
例えば、E-Mailであれば、人が入力した文字や張り付けた写真等の画像を信号に変換するのだが、コンピュータによって、標準文字コードがEUCであったり、UTF-8であったり、SJISであったりと様々な文字コードが標準文字コードとして使用されているし、写真等の画像も、JPEG、GIF、TIFF、PNGなど様々フォーマットがあるので、信号に変換された画像データーを、正しく元のフォーマットに復元できなければ画像として「見る」ことは不可能だ。この違いを吸収するのも「プロトコル」の仕事だ。
動画通信にも、さまざまなデータ様式があるし、一部のパケットが届かないいわゆるパケットロストが起きた場合ににどうするのか、ロストパケットを無視して再生を続けるのか、再送要求をして、完全な再生をするのかも「プロトコル」の仕事だ。
人が認識できる「情報」を「信号」までの変換と、人が認識できる「情報」までの組み立ての役割分担を7階層で定義したのが「OSI7階層」である。
それでは、IPを語る前に、まずはOSI7階層から復習していこう。
第8層ともいえる「人」から見ると、コンピューターより先の仕組みをひっくるめて「プロトコル」と言う事が出来るが、「プロトコル」を正確に表現すると、OSI7階層の同じ層間の通信ルールであって、OSI7階層全体をひっくるめた全体を指す言葉ではない。
このため、第3層に位置しているIP(Internet Protocol)は第3層のプロトコルとしての仕様が決められている。
余談だが、各層間のデータ授受は「インターフェイス」と呼ばれている。
[ OSI7階層 ]
OSI7階層では、各層の役割が明確に分かれており、大きく分けて「上位層」である第7層から第5層と、「下位層」と呼ばれる第4層から第1層に分ける事が出来る。
上位層はアプリケーションやサービスそのもので、OS上で動作するアプリケーションやサービスとして実装されている。
下位層は通信そのものを司っており、第4層から第3層はOSの機能の一部として実装されており、第2層から第1層はNIC(Network Interface Card)等のハードウェアとして実装されている。
[ OSI7階層の役割 ]
階層 | 階層名 | 機能 | 例 | コンピューター上の実装位置 | |
上位層 | 第7層 | アプリケーション層 | サービス提供(マン/マシンインターフェイス) | ユーザーインターフェイス(メール本文、宛て先等入力と表示) | アプリケーション/サービス |
第6層 | プレゼンテーション層 | データを利用者に理解出来るようにコードを変換データを通信に適した形にコードを変換 | メールヘッダー等のアプリケーションヘッダー作成 メール本文/添付ファイル等のデーターのエンコードとデコード |
||
第5層 | セッション層 | サービスレベルのコンピュータ間コネクション確立/開放 | smtp/http等のデーター送受信ルール | ||
下位層 | 第4層 | トランスポート層 | データを相手に確実に届ける | TCP/UDP | OS |
第3層 | ネットワーク層 | アドレスの管理と経路の選択 | IPv4/IPv6 | ||
第2層 | データリンク層 | 物理的通信路確立 | MAC/イーサネット/無線LAN | 有線NIC/無線NIC | |
第1層 | 物理層 | コネクタ形状や信号特性変換 | コネクタ/ケーブル/電気信号/電波信号/光信号 |
インテリジェンスなNICでは、第3層のIPや第4層処理の一部をOSの肩代わり処理をし、NICのハードウェア処理でOSへの負担を軽減する「NICオフロード」をサポートしている物も多い。
OSI7階層の説明だけだと、第2層(以降L2)と第3層(以降L3)の違いが分かりづらいが、L2/L3の受持ち範囲で捉えると違いがわかりやすい。
一般的なLANで使用されているL2プロトコルである「イーサネット」は、「セグメント」の内側だけを担当しいるプロトコルだ。
これに対し、L3に位置する「IP」は、ルーターやL3-SW等のIP中継装置の力を借りて「セグメント」の外に出る事ができる。
[ イーサネットとIPの受け持ち範囲 ]
たったこれだけの違いではあるが、IPが到達できる範囲は、IP中継装置が配置され、ネットワークとして接続されている範囲であれば、どこまででも到達することができる。
[ IP中継装置によるIPの到達範囲 ]
つまり、今我々が使用している「インターネット」は世界中のIP中継装置が相互に接続されている世界最大のIPネットワークなのだ。
このIPの到達性のおかげで、地球の裏側とも通信ができるようになっている。
現在IP中継装置は地球上にしか設置されていないので、インターネットは地球上でしか利用できないが、これが太陽系全体にIP中継装置を設置することが出来れば、太陽系全体でインターネットが利用できるようになる。
目的のサーバーなどのターゲットノードと通信するために、IPネットワーク上の住所に相当するIPアドレスが全てのIP機器に割り当てられており、IP中継装置は、このIPアドレスを見てどこに中継すれば良いのかを判断しているのだ。
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