本書の読み方


 本書の想定読者はWindows Server 2003 Serverの導入を検討している「初級から中級ののシステム管理者」である。上級管理者向けのハイテクニックや応用テクニック、あるいは高度な機能について触れていない。初心者向けのハウツー的なノウハウについてもほとんど記述されていない。

 筆者が書く書籍全般に言えることがだが「本書は入門書と専門書の間を埋める解説書」と言える。
 コンセプトは「まずは試してみよう」だ。知識を拡充させるより、まずは試してどんなものかを実感していただきたい。実感していただいた後に「どのように使えば有効か」を解説している。そういった意味では、技術解説書というより技術導入書と言ったほうが適切かもしれない。机上で読んで理解していただくことを前提にしていないので、是非サーバーの横で本書を開いていただきキーボードを叩きながら読み進めていただければ幸いである。

 本書は前著のWindows 2000 Server構築・運用・実戦ガイドの増補改訂版的な位置付なので、前著と同様に大きく分けて7つの構成に分かれている。

 第1章から第4章までは「Windows Server 2003を使ってみよう」といったアプローチだ。理屈抜きでセットアップし、動かして感覚的にWindows 2000 Serverを体感していただきたい。
 まだWindows Server 2003の体験がない読者は、この章から開始するのがいいだろう。

 第5章から第8章は「ネットワーク構築」が中心になっている。Windows Server 2003はTCP/IPを基本としているので、TCP/IPの基礎理論に自信がない方は第5章「TCP/IPの基礎」から読みはじめるとよいだろう。TCP/IPの解説には物足りないが、Windows Server 2003を管理するのに必要最低限の知識はここで得られる。

 第9章から第12章は「リソース管理とその利用方法」だ。共有の運用、クライアント環境管理、ドキュメント管理など、この章がクリアできれば日常業務に必要なサーバー機能のほとんどはカバーできる。

 第13章から第16章は「Windows Server 2003をインターネットサーバにする方法」だ、本書では機能的な面だけではなく如何にしてセキュリティを強化し要塞化したWindows Server 2003に仕上げるかを解説している。インターネットサーバとして必須機能であるメールサーバについてはOS標準機能ではなく市販製品を推奨している。本書で紹介しているIpswitch社製のIMail Server Gold v.8.0 のセットアップに関しては、頁数の関係上割愛している。本書に収録できなかったIMailの情報は筆者のサイト(http://www.vwnet.jp)で公開しているので、興味のある方はアクセスしていただきたい。

 第17章はWindows 2000 ServerとNT 4.0 Serverからの移行方法だ。多かれ少なかれアーキテクチャ変更がされているので、移行には十分なテストが必要だ。ここでは移行テストの方法と問題解決方法を解説している。ただしハードウェア、ソフトウェア環境の組み合わせは無限に存在するので代表的な問題にしか触れていない。問題解決の糸口を見つける方法も随所にちりばめているので、これらがヒントになることを祈っている。サーバーとしてWindows Server 2003を初めて導入するのであれば、この章は読み飛ばしてかまわない。

 第18章はIEEE802.1xを使ったセキュアな無線LANの構築方法である。無線LANの普及は筆者の予想を遙かに超えて普及した。しかし、電波を使っているが故に盗聴と不正侵入に対してどう対抗していくかがこれからの重要課題である。この問題に対する1つの回答がIEEE802.1xである。Windows Server 2003の認証機能とX.509証明書を組み合わせた強力なセキュア無線LAN構築方法を解説している。

 第19章から21章は運用時に必要な障害対策である。サーバーは所詮機械なので必ずいつかは故障する。故障は業務停止に直結するが、十分な備えがあれば重大故障であってもダウンタイムは最小限にとどめることができる。故障を恐れる必要はない。

 重ねて申し上げるが、本書はオールマイティに技術を解説している本ではないし、これ一冊で全てをまかなうことができるとも思っていない。本書を卒業した後に更にくわしい技術書で高度な技術を身につけていただきたい。
 「理屈はわかったが、ではどうすればいいのか?」とお悩みの諸兄に少しで役に立てられれば幸いである。

2005年8月 村嶋修一

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