正夢 (上)

 

あれは私が高校1年の冬に見た夢。

夜の10時を回ったころ、家族とこたつでくつろいでいた時、けたたましい轟音。

キキキィーーードォーン!!!!!

一瞬みんなが体を固くしたあと、我先にと言わんばかりに玄関からおもてにかけだした。

いつの間に来たのか、救急車と救急隊員の姿。

ガソリンスタンドの壁にぶち当たった車は大破。

勢いあまって、ガソリンスタンドとは反対側の田んぼに半分落ちている。

現実には、そこにおじいさんとおばあさんが二人で住んでいる小さなお家があるはずなのに、無い。

そのお家の向こうに流れる川もなくなって、広い道路になっていた。

救急隊員が火箸のようなもので、何か拾ってあるいている。

よく見ると、それは腕だった。

幾つかの腕や足を拾ったころ、救急隊員は泡を吹いてガクガクと倒れてしまった。

車の中をのぞいていた救急隊員が人形を見つけたと言って、引っ張りだした。

しかし、それは小さな赤ん坊だった。

それはすさまじい光景だった。

目が覚めてからも、背筋に冷たいものが走るような感覚が残る。

誰かに話さなきゃ・・・・正夢になっちゃう。

・・・・・・・

それから3度同じ夢を見た。

友達にも話した。

そして、高校を卒業。

何事もなく日々が過ぎて、夢のことも忘れかけたある日、久しぶりにガソリンスタンドの前を通って違和感を感じた。

おじいさんとおばあさんのお家が無くなっていた。

慌てて家に戻って母にたずねた。

おじいさんが亡くなって、おばあさんは長男夫婦に引き取られたらしい。

誰も住まなくなった古い小さな家は取り壊されたのだ。

でも、まだ川は流れている。

つづく