被災での通信網ダウンを想定して Starlink を入手したので、実際に設置してみてわかった事をまとめます
被災想定と対策
Starlink(標準フラット)の特性
Starlink の通信計測
アンテナ設置
バックアップ回線としての運用
バックアップ回線運用時の注意点
Starlink のサポート
関東圏は、首都直下型地震やプレート型地震など、いつ大きな地震に見舞われてもおかしくない立地になっています
地震だけでなく、最近は台風被害も甚大化していますし、自然災害だけではなくインフラ老朽化等で災害級のインフラダウンも報道されるようになりました
大きな災害が起きると、電話網が輻輳し電話がつながりにくい状況になるのは良く知られていますが、それでも経験的にはインターネット経由であれば外部との連絡は可能でした
しかし、首都直下型地震が発生した場合とかで、通信網そのものがダウンしてしまうと、固定電話や携帯電話だけではなく、インターネット アクセスそのものも不可能になってしまい、通信手段が一切なくなってしまう事になります
このような状況でも、人工衛星を使ったインターネットアクセスを提供している Starlink と、ポータブル電源があれば何とか対策できそうです
Starlink
https://www.starlink.com/jp
余談ですが、以前通信手段確保のために「イリジウムサービス」を検討したことがあったのですが、とても個人が利用できるような価格設定ではなかったです
Starlink の出現で個人でも現実的な費用で利用できる、衛星通信サービスが提供されるようになったと思います
Starlink の標準フラットアンテナは、北北東にアンテナを向けて設置します
これを書いている 2025年時点の最新型である標準フラットアンテナの通信エリアは 110°で、アンテナそのものが 20°の傾斜を持っています
このため、北北東方向に 15°の空が開けた環境が必要になります
Starlink は無数の衛星で運用されているので、必ずしも北北東方向に空が開けた環境でなくても通信は可能です
Real-Time Starlink Satellite Tracker
https://www.starlinkmap.org/
ただし、障害物に衛星が隠れた時に通信断を引き起こすので、出来るだけ北北東の空が見える位置にアンテナを設置するのが望ましいです
ビルに囲まれた都心とかで地上にアンテナ設置しても安定した通信は望めません
都心で Starlink
を使用する場合、屋上にアンテナ設置をするとかの工夫が必要になります
標準フラットアンテナの通信エリアに障害物が無い場所にアンテナを設置して、通信速度を実測してみました
衛星通信なので速度は変動しますが、平均的に下り 150-250 Mbps、上り 10-25 Mbps くらいなので、普通にインターネットを使う分には問題無い速度が出ます
お約束で Traceroute すると、こんな感じでした
Starlink は、衛星に打ちあがった信号をすぐに地上局にダウンリンクして、地上でルーティングする仕様と聞いているのですが、その通信経路は IPv6 通信を見る限り日本国内の IX 経由ではなく、大半を Starlink 管理のネットワークで構成しているようです
アンテナ設置は、常設するか、仮設するかで大きく変わってきます
Starlink を常用するのであれば、テレビアンテナのように、常設する必要があります
腕に自信のある方であれば、Starlink が販売している設置キットを使って自分で取り付けることも可能です
(本家
US では、何でも自分やる方が多いからですかね)
自分で設置する自信が無い場合は、業者に工事依頼する事になります
設置費用は、Starlink 設置をサービスメニューに入れている業者だと10万円程度の工事費となります
僕の場合、被災時のバックアップ回線の想定なので、常設するか仮設にするかさんざん悩んで、どちらでも対応できるように
Starlink の設置キットを購入したのですが、最終的に仮設にする事にしました
(購入した設置キットも、30日以内であれば返品可能なので返品をお願いしました)
設置は、ベランダの内壁に TV アンテナ壁面設置金具を取り付け、そこに TV アンテナ用のマストを立て、先端に Starlink のアンテナ(標準フラット)を乗せる工法に決定
ケーブルの宅内引き込みは、壁に穴をあけるのではなく、窓を少し開けて引き込む事にしました
工法が決まったので、製品仕様を確認しようと、壁面取り付け金具の設計資料を見ると、標準フラットの重量(約3kg)を積載する場合、屋根の上までマストを伸ばすのは不可能な仕様になっていました
それならばと、重量そのものはベランダ床に任せて、金具を2つ使い振れ止めとして取り付ければ何とかなるのではないかと、DIY で金具取付しました
ベランダ壁面が思いのほか弱かった(材質がもろい)のですが、振れ止め程度であれば何とかなるかなと
震災余震で大きく揺れた時に耐えられるかの不安はありますが、様子を見てダメそうであれば取り外せ良いかな(一発倒壊にならない事を祈って)
アンテナは 180 cm のポール2本を連結し、屋根の上にアンテナが出るようにしました
これでアンテナの仮設準備は完了
仮設にすると、設置していない時の Starlink をどう収納しておくかが問題になります
輸送に使われた段ボール箱がサイドを切って開封する仕様なので、再梱包に向いていない構造になっています
この段ボール箱を使って収納するのなら、養生テープ等で段ボール箱が開かないように止めないと収納が出ません
さて、収納時の入れ物をどうするか
収納目的だと
Starlink の標準バックパックはオーバーコストだしなぁ...
と物色していたら、良い感じの収納バックがあったので、こいつをポチって収納ケース問題はクリアしました
Starlink の契約には、常設想定の「レジデンシャル」と、モバイル想定の「ROAM」の2タイプの契約があります
Starlink を常設常用するのであれば「レジデンシャル」一択ですが、僕の場合は被災時のバックアップ回線想定なので、利用停止と再開が自由にできる「ROAM」の 50GB で契約しました(6,500円/月)
50GB を超えると 140円/GB の追加課金になるので、85GB
までであれば無制限(11,500円/月)より安上がりです
(超過分通信の追加課金はオプトイン方式なので、オプトインしなければ 50GB で通信停止になります)
通信不能が長引いて、85GB を超えるようであれば無制限に契約変更すれば良いかなと
バックアップ回線とした場合の注意点について、サポートから色々情報を頂きました
Starlink は頻繁にシステム更新が降ってくるので(数日のテスト期間中にも2回更新があった)、長期間システム更新していないと、通信再開時に 2h 程度の更新が走る事が予想されるとの事でした
2h 通信開始できないのを容認するのであれば気にしなくてもいいのですが、非常時のバックアップなので、出来るだけ迅速に通信開始したいです
迅速に通信開始を実現するには、定期的に(サポートからは最低限2か月に一度)アンテナを設置して通電する必要があるとの事です
面白い事に、Starlink は、通信再開手続きをしていないくても、通電すれば更新が衛星から降ってくる仕様だそうです
(この時に課金は発生しないとの事)
ちなみに、年単位で一時停止していても、契約が解除される等の扱いは無いそうです
今回、Starlink のサポートに何度も問い合わせをしたのですが、その回答のクオリティはびっくりするくらい高い内容でした
こちらの意図を汲んで、こちらの期待以上の内容を回答してくれる素晴らしいスタッフに感謝しかありません
ただ、US 在住の方が対応しているようで、日本時間の夜(US 時間の日中)の回答になります
これで、被災時の通信は確保できるはずですが、被災対策としての出番が来ず、お出かけの時のおもちゃで終わって欲しいと祈るのみです
余談ですが、車移動想定のモバイルであれば標準フラットでも問題ありませんが、キャンプとか徒歩移動とかアウトドアで気軽に使う想定であれば、アンテナがコンパクトな Starlink Mini が良いと思います
Starlink Mini は、アンテナが小さく軽いだけではなく、アンテナにルーターが内蔵されているので、荷物が少なくて済みますし、USB PD 100W(20V 5A)でも給電できるようなので、使い勝手が良さそうです
Starlink 仕様
https://www.starlink.com/specifications?spec=5
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